ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
- 作者:J.D.ヴァンス
- 発売日: 2017/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
アパラチア近郊のラストベルトの貧困を脱して弁護士となった著者の自伝。トランプ大統領が当選した背景を説明するものとして米国でベストセラーになった。米国大統領選挙も佳境ということで現職トランプ大統領支持層を理解するおさらいという観点でよんでみた。
読んでいて泣きたくなるような内容。一族・コミュニティの誰もが貧困と暴力、家庭環境の不和に幼少時から曝されてその環境を再生産していく。救いようがない、無力感のみ感じる。こういった地域ではそもそも教育が大切だという概念すらないので、テレビやインターネットといった情報技術は社会的資本の格差をならす効果はあるものの、貧困や格差をなくす決定的手段とはなりえないことがわかる。なぜならそういったメディアは積極的な情報取得という本人の姿勢により価値を産むものであることから、情報を取捨選択できなかったり、そもそもそこにアクセスする手段を知らない層ではその価値を引き出せないからである。
重要なのは筆者の気づきにあるように「『なにかを成し遂げられる自信』と『向上心』をもつことで自分を変えることができる」というマインドセットなのだが、マインドセットが周りから与えられないためにそのマインドセットをもつことすら叶わないというトートロジーにはまっているのが根本にあるのであろう。
筆者ほど大きな格差を埋めた経験はないが、大学進学率の低い田舎から出てきた自分にはこの構図は身に染みるほどよく理解できる。そして筆者と同様にアイデンティティの帰属に悩まされる。
余談だが、日本語版の解説者はリベラルかつ(米国の)民主党支持だと一読してわかる。